食物アレルギー 揚げ油の共有の危険性
食物アレルギーがあると日々の食事には神経を使いますよね。
アレルゲンの抗体値(レベル)によっては原材料はもちろん、共有する器具や油はないかなど心配は絶えません。
では、除去が必要かどうかを判断するための食物負荷試験では卵はなぜ「固ゆで卵」なのでしょうか。
その理由は加熱による原因タンパク質の変異にありました。
今回は3大アレルギーである卵(鶏卵)、乳成分、小麦の「加熱による変異」についてまとめたのでぜひ参考にしてみてください。
なぜアレルギーはおきるのか
食物アレルギーとは食べ物に対する免疫の過剰な反応です。
特定の食べ物に含まれる「アレルゲン(ほとんどはタンパク質)」に「免疫」機能が過剰に反応してしまい、体にさまざまな症状をおこすものです。
食べものによって含まれるタンパク質は違うため卵には卵アレルギー、小麦には小麦アレルギーと別物です。
三大アレルギーに含まれるタンパク質
食材によって含まれるタンパク質は違います。
小麦のタンパク質
含まれるタンパク質の約85%はグリアジンとグルテニン(両者はほぼ同量)です。
卵(鶏卵)のタンパク質
卵白タンパク質
40種類以上のタンパク質が含まれていますが、約54%は単純タンパク質のオボアルブミンです。
それ以外にはオボログロブリン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボスタチン、オボムシン、リゾチームなどが含まれています。
卵黄タンパク質
大部分はリポタンパク質(LDL、HDL、リポビテリン)です。
牛乳のタンパク質
タンパク質のうち80%がカゼイン 、20%が乳清タンパク質(ホエイプロテイン)です。
卵が加熱に弱い
三大アレルギーの中では卵のみが加熱によってアレルギーが起きにくくなります。
卵と加熱の関係
温度が高いほど、高温時間が長いほど、アレルギーは起きにくくなります。
アレルギーを起こす力の強いオボムコイドというタンパクは、水に溶けやすい性質があります。
そのために、溶き玉汁の固まりを避けてスープだけ飲むことは、アレルギーを起こす可能性が高いと言えます。
マヨネーズは、生卵に準じた対応をしますが、プリンやババロアは、加熱が不十分な鶏卵と考えます。
牛乳と加熱の関係
牛乳アレルゲンは加熱しても、アレルギーを起こす力はあまり弱まりません。
牛乳成分が加工品に含まれている場合は、含有量が最も問題であり、加熱や発酵といった加工処理の違いはあまり影響しないようです。
小麦と加熱の関係
小麦アレルゲンは、パンやクッキーのように高熱で焼かれてもアレルゲン性が低下することがありません。
一方、味噌や醤油に含まれている小麦は、1年近い発酵過程でタンパク質がほとんど分解しているために、アレルゲン性がほとんどありません。
複数の分子がまとまる"複合体"だと熱により変異する
タンパク質の構造
タンパク質の中には四次構造という複数(場合によっては複数種)のポリペプチド鎖が非共有結合でまとまって複合体(会合体)を形成しているものがあります。
立体構造は、そのアミノ酸配列(一次構造)により決定されていると考えられています。
二次以上の高次構造は、いずれも一次構造で決定されるアミノ酸配列を反映しています。
二次以上の高次構造部分が崩れやすく性質が変わりやすいです。
熱での変性のちがい
タンパク質は高温になると変性します。
これは熱変性と呼びます。
加熱してもタンパク質の一次構造が変化することはほとんどありません。
二次以上の高次構造は約60℃以上で崩れやすいです。
透明で液状の卵白が、加熱されると白い固形に変化するのはこの原理からです。
また、低温でも変性を起こすことがありますが、通常のタンパク質が低温変性を起こす温度は0 ℃以下です。
変異してもアレルギーになりうる
卵は加熱すると固まります。肉類は、加熱すると色が変わります。
これはタンパク質の熱変性の為です。
ですがアレルゲンとして免疫機能が過剰反応することに変わりありません。
高温になる揚げ油の共有においても「食物アレルギー調査報告書 平成27年3月 公益社団法人全国学校栄養士協議会」には
Q エビやいか、大豆料理の揚げ油の処理について。
えびやいか大豆など揚げた後、その都度油は廃油にするべきか。今はそのまま使用してしまっている。
揚げ油は高温になるので アレルゲンもなくなるかとも思うが。事故もないので使用してしまっている。
アレルギー 対応で揚げ油を廃油にしていくことは、油の管理や献立の配列がとても困難になる。
A 長時間高温にさらされることで、原因たんぱく質は変性しやすいと考えて良い。
このため、一般的に適切に管理された揚げ油であれば、複数回の使用は可能と考える。
もし、医 師が揚げ油の管理を求めてくる場合、対象児童は最重症患者であり、安全な学校給食提供 は困難と考え、弁当対応を考慮するとよい。
しかし、通常はそのような重症児は極めて稀 であり、診断医に再確認すると良い。
とあります。
熱変質するから、アレルゲンがなくなるわけではないので、 食物負荷試験の結果や診断医の指示に従い除去をすると良いでしょう。